goito-mineral2004-08-24

満ばん柘榴石、ヤコブス鉱、園石  群馬県勢多郡東村小宮山鉱山第一鉱床
オレンジ色透明な小結晶の集合が柘榴石、その下地(画面右下に見える)やや紫がかった黒色の部分がヤコブス鉱と園石。
他は菱マンガン鉱など。 画面の左右約5cm



今日の画像は難しいです。表面を覆うオレンジ色の薄層が満ばん柘榴石です。よく見ると、オレンジ色で透明な小結晶の集まりとなっています。あまりに小さなものですが、ぎりぎり宝石種です。画像ではわかりにくいですが、画面左下の隅に柘榴石を特徴づける二十四面体のころっとした結晶が何個か見えます。
この標本を気に入っているのは、マンガン鉱石の鉱物組合せの妙が味わえるからです。層状マンガン鉱床の鉱石を観察していくと、この鉱物は何とは接して産するが、何とは決して接して産しない、という法則があることに気がつきます。また、採集ガイドなどの本にもそれは書かれています。そして、その法則は、とても厳密です。
一般に、マンガン鉱物は、成分に珪酸の多い鉱物と共存できるかどうかで大別ができます。
珪酸の多い鉱物といえば、珪酸そのものである石英角閃石、そしてこの満ばん柘榴石がそれに相当します。一方、これと共存できない鉱物といえば、緑マンガン鉱、キミマン鉱、そしてヤコブス鉱があります。


この標本を採集したとき、満ばん柘榴石とヤコブス鉱が接している! と驚いたものです。こりゃーすげー! と。マンガン鉱物の組合せは化学的な条件に規定されているものですから、まず「例外」は考えられません。また、柘榴石はどこからどう見ても間違えようのないものだし、ヤコブス鉱は磁石につくからすぐ分かる。これは一体……柘榴石にそっくりな別種か、それとも組成の特殊な柘榴石なのか……しばし興奮しました。
結局、答えはというと、柘榴石の部分(これは細脈です)と、ヤコブス鉱の部分との間に、ほんのわずか、ごく薄い、0.1ミリにも満たないような白色鉱物の層が挟まれているのです。画面中央の白い部分がそれです。おそらく炭酸マンガンの鉱物でしょう。



……ああ、自然というものは、かくも厳密なものなのだなぁ。



こういうことに気づくと、マンガン鉱物が面白くなってきてしまう。そして、そのまま突っ走ると大変なことになってしまうのです。


マンガン鉱物趣味の楽しさやばさについては、昨年10月29日、30日付けの日記にも書いています。そちらもどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20031029
http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20031030