東京都青少年健全育成条例案に対する東京工芸大学マンガ学科教員一同の意見書
東京工芸大学芸術学部マンガ学科の教員一同による意見書です。
今回の東京都青少年健全育成条例案は、あまりにも適用範囲が広く、妥当性を欠くものと考えています。
今朝の朝日新聞によれば、継続審議の方向になりそうなのですが、もとより、都民や関係者の意見を聞く暇を与えず拙速に決めてしまおうという姿勢が都の内部にあり、そのやり方にも強い不信感を持っています。
継続審議になる方向と伝えられていますが、決して廃案になったわけではなく、今後もしっかりと意見を表明し、都議や国会議員に働きかけていく必要があるでしょう。
以下、とりあえずこの個人ブログにて意見書の文面を公開します。
(ブログでの先行公開については、学科内でオーソライズされています)
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「東京都青少年健全育成条例改正案」に対する意見書
私たち東京工芸大学芸術学部マンガ学科教員一同は、マンガに関する専門教育と学問的研究という立場から、現在東京都において検討されている「東京都青少年健全育成条例改正案」について、強く懸念の意を表明します。今回の改正案の施行が、将来にわたってマンガ表現ならびに日本の文化全般を大きく損なう危険を有すると考えられるためです。
今回の改正案に関して、私たちが問題とするのは以下の点です。
1)「非実在青少年」という概念が指し示す対象が「描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」と、きわめて曖昧かつ恣意的な運用が可能なものであること。創作物における登場人物の見かけの年齢は絵柄や作風にも左右され、年齢不詳の場合が多く、過剰反応を引き起こし、表現の自由を侵害するおそれが大きいと言える。また、現実に存在する児童・青少年の保護、健全育成に資する目的が見失われていると考えられる。
2)現行の青少年健全育成条例などにおいて、すでに表現規制はなされており、一定の秩序と成果が得られていること。屋上屋を架す新条例の必要はないと考えられる。
3)東京都青少年問題協議会の議事録、パブリックコメントの取り扱いなどを見るかぎり、当事者である関係者などの意見や、明確なエビデンスを取り入れた議論が十分になされたとは言えず、拙速に進められていること。これは、都政一般への不信を強く引き起こすものである。
4)日本の出版社等の事業者は東京に集中しており、マンガ、アニメに関するイベント等も多く東京で行われている。本改正案は東京都だけの問題ではなく、国内全体の表現に影響を及ぼす問題であり、憲法の保証する表現の自由を大きく侵害するものである。
東京工芸大学マンガ学科教員一同は、児童に対する性的虐待や性犯罪の根絶に反対するものではありませんが、本条例案はそれに資するものではないとの見解から、ここに本意見書を提出する次第です。
2010年3月15日
東京工芸大学 芸術学部 マンガ学科
主任教授 菊池 優
教授 畑中 純
准教授 細萱 敦
准教授 関口 尚
准教授 よしまさこ
准教授 伊藤 剛
講師 木寺良一
講師 伊勢洋平