goito-mineral2004-08-29

マースター石  東京都西多摩郡奥多摩町白丸鉱山
8月28日付け日記と同じ標本、部分接写。 画像の左右約2cm



「マースター石」には、「マーステュー石」という和名表記があります。元となる英名表記は Marsturite、人名の姓と名の頭を接いだ命名とのことで、「マーステュー石」のほうが原音に忠実だという話です、むしろマーステュア石としたほうが英語の発音としては自然な気もしますが、正確なところはわかりません。ぼくは以前から慣れていた「マースター石」の語感のほうが好きなので、こちらを使っています。

組成のわりに稀な鉱物で、原産地のフランクリンのほか、イタリアの Molinello Mine で知られています。日本では、この白丸鉱山のほか、岐阜県鶴巻鉱山で産出が知られています。鶴巻のものは、カリオピ石などのなかにパッチで産出しており、白丸のように脈を形成することはないようです。


南部石とは近縁の鉱物で、ナトリウムを含みます。
ちょっと組成を並べてみましょう。

Marsturite   CaNaMn3Si5O14(OH)
Nambulite    (Li,Na)Mn4Si5O14(OH)
Natronambulite (Na,Li)(Mn,Ca)4Si5O14(OH)

珪酸塩の骨格が同一で、よく似た鉱物であることがわかります。
日本の層状マンガン鉱床では、ナトリウムを含む珪酸塩鉱物(南部石、マンガンエジリン、マースター石、セラン石など)は、まずブラウン鉱に伴われるようです。鶴巻鉱山のマースター石については、手元に資料がないのではっきりしたことがいえないのですが、一般にナトリウムを含む珪酸塩鉱物がブラウン鉱と伴われることは、経験的に知られています。