手間なしブライト

goito-mineral2004-04-20


手間なしブライト」が妙に高くなっている。
近所のドラッグストアを何軒か回ってみたのだが、208円だったり198円だったり。つい先日までは120円〜160円台くらいで安売りしているのが普通だったのに。どうせ使うものなのだから、もっとたくさんまとめ買いしておけばよかった。
「手間なしブライト」とは、衣服の染み抜き用酸素系漂白剤。ライオンの製品だ。
過酸化水素水に界面活性剤とキレート化剤を加えたものだが、これが鉱物標本の洗浄に多大な威力を発揮する。泥よごれはもとより、地衣類や菌類など生物起源のもの、そしてマンガンの酸化物を実にきれいに除去してくれる。しかも、地の鉱物を痛めない。通常、この原液を容器に張り、一晩程度、石を漬けておく。あとは流水ですすぎ、乾燥させるという使い方をする。それで本当にきれいになる。古色のついた金属鉱物などの場合、本当に「新品に戻る」という感じだったりする。

マンガンの酸化物(表面を黒い「皮」のように覆っていることが多い)を取り去るのには、塩酸や蓚酸、アスコルビン酸などの還元性の酸を用いることができるのだが、これだと炭酸塩鉱物などには使えない。本来の鉱物を痛めてしまうからだ。しかし、「手間なしブライト」は、一部の二次鉱物(水亜鉛銅鉱など)が若干、退色する程度で、たいがいの鉱物にはノーダメージで使用できる。たぶん、過酸化水素に加えて界面活性剤とキレート化剤の配合が絶妙なのだろう。鉱物標本の薬剤による洗浄については、日本よりも欧米のほうがよほどノウハウが蓄積されている。しかし「手間なしブライト」の出現によって、その遅れていた日本鉱物趣味界は大きなアドバンスを得たんじゃないか。偉いよ、ライオンの商品開発部は。こんな目的外のことで評価されても嬉しくないかもしれないが。

それにしても、最初にこの衣服用漂白剤が鉱物の洗浄に使えると気がついたひとは大したものだ。なかなかこれを使おうとは思わないだろう。
ぼくははじめ、ある掲示板でがー君id:gaaaが言及していたので知ったのだが、そのときは半信半疑だった。なぜかというと、二酸化マンガン過酸化水素で溶けるという誤解で書かれていたのと、「手間なしブ●イト」と、意図不明の伏せ字がされていたからだ。ああ、こういう伏せ字をしているヤツのいうことは信用できんよな、と思った。その頃はまだ知り合っていなかったのだが、いまからすると早計だった。ごめんな、がー君。