島田清次郎『地上』

http://www.aozora.gr.jp/cards/000595/files/46166_22431.html
いかん、やらなきゃいけないことが山積みなのにこんなものを見つけてしまった。
大正時代に一世を風靡した大衆小説で、作品そのものよりも作家の発狂にいたるスキャンダラスな振る舞いで記憶されているものですが、いつの間に「青空文庫」に……前からあった?
しかし出だしからすごいですね。いきなり急転直下の展開。しかも美少年登場、めっちゃホモソーシャル

桜の並樹の下路(したみち)を校門の方へ急いで来ると、門際で誰かが言いあっていた。近よってみると、二度も落第した、体の巨大な、柔道初段の長田が(彼は学校を自分一人の学校のように平常(ふだん)からあつかっていた)美少年の深井に、「稚子(ちご)さん」になれ、と脅迫しているところだった。



で、主人公はこの美少年・深井君を助けるのですが……いちいち修辞がそこはかとなくエロい(主人公がバナナを貪り食うとか、さ)というか、お約束で言っておくと「これなんてBL?」といいますか。こりゃ発表当時ベストセラーになるのもわかるわ、と思いました。
島田清次郎については、「サイコドクターあばれ旅」に詳しいですね。
http://psychodoc.eek.jp/shimasei/


あと、中原中也を扱ったパトグラフィの本にも対比的な事例として取り上げられてるらしいんですが、こちらは未読であります。


希求の詩人・中原中也

希求の詩人・中原中也

著者によると「中也の自滅的生涯の本質は何であったのか、人から嫌悪される一方でなぜ“魂の詩人”などと言われたのか、真性の分裂病を発病した同時代の作家・島田清次郎と、二度にわたって精神病状態を示した中也は、どこがどのように違うのか、そうした相違点や矛盾を、私の人間観から解き明かそうとする試み」とのこと。