ノルウェイの森』文庫版を買う。

発表当時、買ったのはいいけれど読めなかった作品だ。最初の数ページで「ケッ」とか思ってそのまま読み進められなかったのだ。そういう感性で、本当に若いころは損していたと思う。こういうのを「潔癖」とか「批判的精神」といって褒めるひとがいるかもしれないが、そんなことはない。ただ愚かなだけだ。ようするに、オタクだったわけだな。流行りものはダメ、オシャレなアイテムとして消費されているものはダメ、とする、ただの「スネ者」意識。それがいかに自分にとって損か、という話だ。

……とまあ、そんなふうにまとめてみると、「たかが村上春樹ごときで損もないもんだ」とかなんとか言うひとが出てきそうだし、そういうひととは、ぜひ膝を交えてともに自分と自分の来し方について語り合ってみたいと考えているわけですが、それは置くとして、帰宅途中のバスのなかで少し読み進めてみたら、冒頭の数ページで、すでに「うわ、ギャルゲーくせー!」とか思っている自分に気がついた。

もちろん、この感想は転倒しているのだが、しかし「直子」について主人公が語り出すくだりが、ページの切れ目、めくりの位置にきていたのが、変にギャルゲーのシステムくさく感じられたのだ。本のページをめくる動作が、まるで新しいウィンドウを開くかのように感じられた。

それはそれとして、なぜいまあらためて『ノルウェイの森』を読みはじめたかというと、自分が主人公と同じ年齢になったからだ。
暇暇に読みます。