ずいぶんあちこちからリファをいただき、しかも随分と参考になるものが多く、少し驚いています。


話題があまり拡散するのもよくないので、こちらからのレスポンスは逐一しませんが、id:emifuwaさんにちょっと一言。ぼくに対して「自分の利益にならないから」何も説明する必要はない、とおっしゃる。それはそれでいいです。残念ではあるし、腐女子の内面にあるものを根拠に、山下書店のポップを糾弾したのだから、説明責任はあると思うのですが、それも致し方ありません。したくないのだったら、無理にしなくてもいいでしょう。

でもね、そこで、ぼくの発言なども、いささかねじ曲げて記しているのは、もっと残念なことなんですよ。
これ、細かいことのようだけど、ちょっと言わせてもらいますね。

別に怒ってないし、怒るような話でもないのですが、そういうのって、他者に対する「無意識的な感情のレヴェルでの挑発」だと思うのですよ。
ようは、ここでぼくが怒ってみせる、すると「ほら、やっぱりコイツは分かってない! 外だ敵だ! 私たちは私たちの王国を守るのよ〜!」となるというものです。以下に指摘したものだけではなく、ここに至るまでの言葉のうちにも、多くのこの手の「挑発」が含まれていたと思うのですが、ぼくは主に男性のオタとの関わりで、この手の「挑発」には慣れっこになっているので、いまさらそんな手には乗りません(笑)。
「手」も何も、そんなことを意図したつもりはない、といわれるのでしょうが、だったらなおのこと「無意識的な戦略」ということになります。ひとは、ぼくも含めて、コミュニケーションのなかで「無意識的な戦略」を常に飛ばしあっているものです。


ではどこのことをいっているのか。

http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/comment?date=20040817#c

今友だちから連絡もらって確認しました。伊藤さん、17日の日記も16日のご自身のコメントも書き直されましたね。山下書店のポップについての「陰湿に見える」「小姑みたいと思った」というのが削除されていますし、コメント欄はもっと全体的に居丈高(に私には思えていました)だったのが、随分ゆったりした表現になっています。保存しておくべきでした。

ここですね。
ぼくはちょっと苦笑しちゃったんんだけど、コメントの修正は、読みにくかったので改行位置を直し、emifuwaさんのはてなidを「emifusa」と誤記していたので、それを直した程度です(たしか、誤字とかの修正もしなかったような記憶があります)。つまり、最初が「居丈高」にみえたのは、ホントに初見の印象がそうだったというだけで、二回目に読んだらそうでもなかった、ということなんですね。
これは、普通によくあることなんで、別に目くじらを立てるような話ではありません。
「保存しておくべきでした」といわれていますが、本当にそうだと思います。まずないとは思いますが、ぼくがコメントの文面を修正し、それを忘れているという事態があるといけませんから、ぼくも参照したいので。

となると、ここでemifuwaさんの内面、というよりも自意識に踏みこむことが可能になる。
なぜ、このような印象の差が生じたのか? ということですね。
ぼくには、ぼくから「内面の言語化」を強いられた途端、心理のうちにぼくへの攻撃性が生じたようにみえるのですね。


それと、17日の日記に「小姑」と書き、わりとすぐに削除したのも事実です。

実際、今回の件では、ぼくはemifuwaさんほかの方のもの言いの「陰湿さ」がイヤだな、と思ったし、最初の印象はまさに「小姑か、あんたら?」というものでした。もうちょっとちゃんとしたいい方をすれば、自分たちこそが共同体の規範を代表しており、しじゅう周囲にチェックの目を配らせている態度を感じたということです。もっといえば、教条主義的だし、原理主義的だし、目をつり上げて、肩肘張った、イヤな感じのものにみえました。
加えていえば、「なんだよ、またオタの内ゲバかよ、しょうがねえなあ」とも思いました。
この「しょうがねえなあ」というのが、いらぬお節介の動機となっています。
お節介を焼く、ということは、相手に対して一定の敬意を払っているということです。相手のことを「こいつ馬鹿だな、どうしようもねえな」と思ったら、ぼくは手を出さず、黙って観察を続けます。


ではなぜ削除をしたか。
それは、こうした感想を出すのは、もう少しやり取りが深まってからでいいと考えたからです。
そうしたダンドリを考えたのも、「内面を言語化」することのメリットは、ぼくではなく、むしろemihuwaさんの側にあると考えていたからです。
いったでしょ。ぼくは「お節介」だって。

ぼくが本当にただ、情報が欲しくて、自分の仕事のネタにしたいだけだったら、こんな形で「介入」なんてしませんって。そこがぼくが「研究者」ではなく「批評家」である所以だし、同時に限界だと思うのですが、それこそid:urouro360さんにも指摘されているとおりなわけで。


http://d.hatena.ne.jp/urouro360/20040817#fujo

しかし当事者ではなく第三者(マンガ史的立ち位置でもいいが)だからこそ、emifuwaさんの語りはめちゃくちゃ面白く、示唆深く、ネタの宝庫だと思うのだが、なんであんな興味深い一次資料を目にして自説への取り込みしか思い至らないのか、そっちの方が不思議だ。トラバ−コメントでわずかながらでもつながりができたのだから、そこをきっかけに語りを採集していけばいいのに。自分は古老の話を聞くタイプのフィールドワークを主としてやっているから、一次資料に出会ったらまず採集採集、協力者に出会ったらとにかく質問質問、を常としているのでものすごく違和感を感じた。つーか社会学民俗学の相互批判の構図がうまいことあてはまっちゃうよ。

このご指摘には、なるほど耳が痛いところがあるんだけど(なぜなら、興味深い一次資料だってのはその通りだと思うから)、ただ、ぼくの立ち位置としては「わーい、ネタの宝庫だ。しめしめ」ってな感じで彼女から語りを採集採集ってのは、ちょっと人が悪すぎるように思ったのですよ(これは民俗学一般を「人が悪い」と言っているのではないのですよ。為念)。「自説へのとりこみ」……といわれてもそれはちょっと本意ではないのですが、しかし、ここでぼくがぼくなりの枠組み(この場合はマンガ表現史)でものをいっている以上、そう解釈されるのも、まあ致し方はないかなと思います。

ここで話を「内面を言語化」することのメリットに戻しますが、それをすると、対象が相対化され、気持ちのうえでたいへん、楽になります。世界がひろがります。これは世間知的な一般論ですし、経験からもいっていますが、それも必要ない、といわれるのであれば、致し方ありません。
ぼくは少し悲しそうな顔をして、引き下がるしかありません。



あと、urouro360さんと他のひとから、ぼくが男子オタのホモフォビアを引き合いにだしたことについて、それはemifuwaさんの語りには含まれていないダロ、というご指摘をいただきました。

emifuwaさんの語りには「世間」は含まれているが「男子オタ」は含まれていない。なぜここに急に「男子オタの反発」が出てくるのか。元ネタに想定されていない「男子オタ」を引っ張ってきて、あまつさえその「男子オタ」を批判するという書きよう。goitoさんは第三者的に、「腐女子」と「男子オタ」の対立構図を描き、さらに「男子オタのホモフォビアにもとづく反発」によって「腐女子」が「卑屈」になっているという構図を描いているようである。

それは、emifuwaさんの以下の記述に基づくものであります。男子オタにせよ、そうでないにせよ、ヘテロセクシャル男性の視線を過剰に内面化してないかなーというのが、私の含意であります。


http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040731#p1

腐女子が言われてイヤな言葉のひとつに「あの作品、同人女ウケするもんな」という、主に男性オタからのつぶやきがあります。

同人女ウケする。つまり、美形キャラやら美少年がいっぱい出てくる。なんかやたらと「狙っている」ような言動を取る。葛藤なり愛憎なりも散りばめられている。それに踊らされる同人女によって人気上昇、売り上げ上昇、「本当はたいして面白くないのに」「しょせん女ウケじゃん」等々。

デスノートでさえ「最近のジャンプは腐女子ウケする漫画ばっかり」などと言われる御時世です。デスノート、何部売れているかわかってるんでしょうか。テニプリは、本当に女子しか買ってないとでも思われているんでしょうか。

こういう記述があるのに、「emifuwaさんの語りには「世間」は含まれているが「男子オタ」は含まれていない」というのはちょと無理があるんじゃ?>urouro360さん。たしかにぼくは、この部分を拡大したし、そこを中心的な話題として持ってきた。そのことへの批判ならわかるんですよ。しかし、「含まれていない」ってのはどうなんですか。それはやはり誤読じゃないの? こういうのをみつけると、それをurouro360さんの「否認」とみなし、そこを梃子に、今度はurouro360さんの心理の解析をはじめちゃうよ〜オレはw。


最後に、もともとの発端となった山下書店のポップに関しては、ぼくからは何のコメントもありません。判断できないからです。その書店の客層、POSレジから取られたデータ、ポップを書いた店員の社内的な地位……などを総合的に勘案しないと何ともいえないのですね。
これは考えにくい事態ですが、売上げデータなどから、「腐女子」層にターゲティングしたほうが売上げに貢献できる、という判断がされた可能性もある。もしそうだとしたら、それは単にマーケティングだし通常の商行為でしかない。しかし、それがそうであるという断言もまた、できません。

だから、特にコメントはありません。



というわけで、このへんで。
コメント欄に書き込んでくださった皆さん、いちいちレスをしなくてすみません。
いまちょっと余裕がないので、このくらいが限界なのです。どうかご容赦を。
それからid:XQOさん、ゆっくり読ませていただきます。反応してくれてありがとう。とても嬉しいです。