白丸出現から一年

もう前回の白丸鉱山赤壁出現から一年か。時の経つのは早いものです。あそこでのビデオ撮影は、もともと糸魚川での撮影予定が雪でキャンセルとなり、急遽、決まったもの。シナリオもダンドリもへったくれもなく、仕方なく現場でぼくが仕切ってしまったのでした。それで『鉱物マニア』ビデオには、ぼくが企画から関わってると思っているひとが出てきたみたいなんだけど。

前にもこの日記で触れたような気もするが、白丸鉱山というのは、多摩川にかかる白丸ダムの湖底にあるマンガン鉱山跡で、ダム工事などの際にしか姿を現さない。だいたい5年に一度、「出現」するのだけれど、坑口わきの通称「赤壁」とよばれる板状のブロックから、バリウムストロンチウムを含むレアミネラルの産出が知られている。新鉱物も二種、発見されている。「多摩石」「東京石」だ。数年に一度、というイベント性と、世界的に見ても特異な産出鉱物から、鉱物採集趣味のひとが短期間に集中して訪れる場所となっている。奥多摩とはいえ東京都下という交通の利便性も大きい。しかし、岩はたいへん堅く、鉱物の同定は困難、目立つ色やはっきりした結晶の鉱物もとくにない、という通好み&難易度AAクラスの産地であるわけだ。実際、ぼくは去年、タガネを10本は駄目にしている。

話を聞きつけてとりあえず来てみたひとには、何か狐につままれたような気分で帰っていったひともいるんじゃないだろうか。例えていうなら、グルメ雑誌で評判の期間限定の名店に行ってみたら、何か味のない菜っぱと薄い塩味の湯かなんかが出され、うまいんだかまずいんだか分からず、仕方がないから箸袋を記念に持って帰るとかの展開になったんじゃないかと推測しているのだが。

あとひとつ、思い出した。がー君(id:gaaa)とはじめて会ったのも白丸だった。正確には鉱山跡ではなく、そこへ行くダム湖畔の遊歩道で行き会ったのだった。前から話はきいていたが、具体的なつきあいができてまだ一年だったのか。もうずっと昔から知り合いだったような気がしていた。そうそう、初対面なのに「今日はあひるは連れてきてないんですか?」とか尋ねたんだよな……。