『線が顔になるとき――バンドデシネとグラフィックアート』

出版社さまよりご恵投いただきました。


線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート

線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート



フランスのバンドデシネ研究者による描画論です。
図像としての「キャラ」について考察する際、きわめて有効な補助線を提供してくれると思います。ヨーロッパだけでなく、アメリカや日本の<マンガ>―この場合は、コミックス、バンドデシネ、マンガなどを含んだ上位概念として<マンガ>と言っています―を手際よく取り上げつつ、まさにキャラの根幹をなす「顔」という問題系に迫るものであるようです。


まだ序章だけを見たところで、丁寧に読み込まなければならない本でもあるので、軽々に取り上げるべきではないのかもしれませんが、まずはご紹介をしておきます。
やはり、日本の中での考察だけを見ていてはいけないな(海外の言説や作品に目を向けなさすぎ! というのは、小田切博さんにいつも叱られていることでもあります)と、あらためて思いました。私たちが考える「マンガ」や「キャラ」を、もっと大きな流れの中におきなおす契機があるように思います。私たちは一体、どれだけ西欧的なものと連続していて、どれだけ切断されているのか。それすらも、日本のなかだけを見ていたのでは知ることもできないわけですから。
本書で、絵画史や映像哲学を参照しつつ進められる議論は、決して取り付きやすくはありませんが、論理展開がスピーディなので、自分自身の問題意識や関心さえ明確になっておれば、読みづらくはないと思います。


版元の人文書院さんとはお付き合いがないのですが、私の興味や関心にぴたりと添った本を送っていただき、ほんとうに嬉しかったです。担当者さま、ありがとうございました。