NTT出版Webマガジン、更新されました
今回は、いましろたかしの初エッセイ『グチ文学 気を病む』と、『化け猫あんずちゃん』『釣れんボーイ』です。
http://www.nttpub.co.jp/webnttpub/human/013/22.html
NTT出版のこの連載は、わりと意識的にいわゆる「サブカル」方面に振っています。
なんか、ぼくは「萌えマンガ」のひとだと思われているフシがあるので、そればっかりでもないよと、むしろ、近年はかつての「サブカル」的才能が、萌え/オタ方面に流れているふうでもあるので、「サブカル死なないで欲しいの!」という気持ちでやってるところがあります。ここでいうカッコつきの「サブカル」てのは、ロックや現代文学、現代美術に親和性の高いものというほどの意味ですね。
初回からのラインナップを並べてみましょうか(数字が飛んでいる回は、川原和子さんの担当回)。
第1回 島田虎之介 『トロイメライ』
- 作者: 島田虎之介
- 出版社/メーカー: 青林工藝舎
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: コミック
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- 作者: 近藤ようこ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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- 作者: 都留泰作
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: コミック
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- 作者: 熊倉隆敏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: コミック
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- 作者: 本秀康
- 出版社/メーカー: ミュージックマガジン
- 発売日: 2007/11/24
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 33回
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第11回 武富健治 『鈴木先生』
- 作者: 武富健治
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/07/11
- メディア: コミック
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- 作者: 藤野もやむ
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2008/07/10
- メディア: コミック
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- 作者: 岡崎京子
- 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 津野裕子
- 出版社/メーカー: 青林工藝舎
- 発売日: 2008/03/31
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- 作者: いがらしみきお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/04/01
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(以下、作家の方については「有名人フルネーム呼び捨ての原則」で失礼いたします)
こう並べると、若い作家の作品が実に少ないですね。
従来から言われているような若者文化としての「サブカル」の現在を掬い取っているかといえば、それは違うだろという声も聞こえてきそうです。
もっとも、いまのマンガ状況は、若い作家の若い仕事=新しいものという枠組みがすでに崩れているともいえるので、一概に「サブカル」=「若い作家のもの」とは言うことはできないんですが、やはりこの連載のラインナップは、従来的な「サブカル」的な尖り方とはちょっと位相の異なるものとなっています。
これは個人的な感情でしかないのかもしれないのですが、たとえば浅野いにおや小玉ユキなど、「いま」のアクチュアルなよい仕事をされていて、かつ「若者文化/サブカル」の枠でとらえられる作家さんもおられるのは承知しつつ、そこにストレートに言及するのをためらう部分があるのですね。
これは、ことこの連載についてはそうだと思っています。もしかすると、単に「ひねくれた姿勢」かもしれないし、あるいは「ゲームラボ」の連載と相補的な関係にしているだけのことかもしれません。
阿部嘉昭氏の新刊『マンガは動く』などを見ると、ぼくよりも10歳は年上の方なのに、浅野いにおや魚喃キリコなど「青い」作風の作家さんの仕事を分析されていて、氏のほうがよほど「サブカル」と正面から関わられているのかもなあと思ったりもします(※付記:購入しただけでまだパラ見なので、感想はまた変わると思います)。
さて、いま「ひねくれた姿勢」と言いましたが、それもあまり正確ではなく、むしろ自分が中年であることを自覚的に前に出したチョイスが卓越していると言ったほうがよいでしょう。
具体的には、むしろ若いひとにも80年代からのマンガ家の仕事を伝えるということを念頭に置いている部分があるのです。もっともそれを支えているのは、念頭に置いた読者が誰であれ、あのマンガ面白いのに、読まれてないの? みたいな気持ちだったりします。
たとえば、このラインナップでは藤野もやむだけが「80年代のこころを今に伝える」から外れた、90年代以降の若い作家ですが、これは実は田中秀臣さん id:tanakahidetomi がぼくの連載をマンガ読みの参考にされているとブログにお書きになっていたのを見て(そのこと自体は、とても嬉しいことだったのですが)、そうですか、じゃーこれはどうですかと、返しにくいであろう球を投げてみたという次第なのです。もともと「ゲーラボ」のほうに持っていくつもりのものだったんですね。ところが、はてブなどを見るかぎり、最も反響があったのはこの回なのでした。
それにしても、つい先日出たばかりの7巻で完結した『はこぶね白書』(いまアフィリ貼ってて気がついた! もう新刊出てたのか……見逃してた!)、いいマンガなんですがいまひとつ話題になってないようです。面白いのに、存在に気づかれていないのかと思います。