野に山にSPK_2

ついに、あの<名盤> "Machine Age Voodoo" がCD化されたんですよ!
注文してたのが昨晩届きました。


Machine Age Voodoo

Machine Age Voodoo



<名盤>と、余計なカッコつきにしてるのは、1985年リリースのこの盤が、一般的にはモノスゴク評判が悪いからなのです。でも孤独に支持してきた甲斐があった、ようやくCDで聴ける……うれしい。本当にうれしい。そんな気分です。
収録曲はこんな感じです。てか、これPVあったのか……。


"Machine Age Voodoo"
http://www.spike.com/video/2792327?cmpnid=753&pt=sr&refsite=7063


以前、SPKについてはこのブログでも触れたことがあったんですが(id:goito-mineral:20050923:p1)、もともとガリガリのエレクトロ・ノイズをやってて、死だの狂気だの奇形だの変な手術だののグロテスクな意匠にドゥルーズだのフーコーだのといった現代思想をまぶして展開していた、稀代のノイズ・バンドだったのです。
YouTubeにその初期のライヴ映像が上がってますね。石野卓球が高校時代に聴いてたノイズ・ミュージックを「ピーとかガーとか変な悲鳴」と形容してますが、たぶんこの曲のことなんだろーなーと思ってます。これでおおよその雰囲気は分かると思います。


"The Agony of the Plasma"



それが、ヴォーカリストのニール・ヒルの自殺を経て、路線を大きく変更。女性ヴォーカリスト、シーナンを迎えてディスコティックなエレクトロ・ポップをやるようになったのが、この盤なんですね。
そりゃあ評判悪いですよ。それまでのガリガリのノイズを愛好してる人々からすれば、「日和ったな!」てことになるでしょうし、そもそもこうしたポップさを嫌ってノイズに行った人も多そうです。どっちも好きてなぼくみたいな者は、やっぱり少数派なんでしょう。90年代に入って再発された "Auto-Da-Fe" の日本盤ライナー(秋田昌美メルツバウ)には、「なんという情けない音」とまで書かれてるし……。


でも、でも声を大にして言いたい! これはこれでやっぱり名盤であると。
確かに思い切ってメジャーに進出したわりには売れなかったし、いまからすると、歌詞とかジャケとか微妙にコッパズカシイ感じもしますが、その「安さ」、その「わかりやすさ」こそ、事実上唯一のオリジナル・メンバー、グラエム・ラヴェル先生の真価という気もします。少なくとも良質のエレポップであることに変わりはないはずですし、たとえばプロパガンダ『シークレット・ウィッシュ』あたりとは並べてもいいんじゃないかと。


などとこの盤について熱く語るのはもしかしたらぼくくらいかもしれないのですが、しかし、エレクトロ・ファンク〜ボディ・ミュージック時代の中期キャブスもなんだか再評価されてるふうでもあるし、この再発が注目されるといいなと思っています。


ただ惜しむらくは、ボーナストラックが皆無なこと。
せめて12インチヴァージョンの "Metal Dance" くらいはボーナストラックに入れて欲しかった。
初期のノイズ/メタルパーカッション路線と、エレクトロ・ダンスの混交として、ひじょうに良いバランスの、それこそ名曲でしょう。でも不遇なんですよね。卓球の『テクノボン』でも、本文ではテクノ・クラシックスとして名前が出てくるのに、データ部ではなぜか(たぶん単純なミスで)落ちているし。
YouTubeで、当時のマドリッドTVライヴを見ることができます。まーいま見ると、自分で "Strange new sound!" て言っちゃうあたり、気負いが感じられるというか、微笑ましいというか、若干トホホな感じは否めないんですが……。


"Metal Dance"



YouTubeのコメント欄でも酷評されてて切ないですよ。かっこいいのになあ(安っぽいけど)。
この時期のライヴ映像だと、こっちのほうがいいかな? "Metal Dance" 12インチのB面、"Will to Power"、 たぶんこれもマドリッドTV。
昔は西新宿の輸入ビデオ屋に通ってこのへんのブートビデオを熱心に集めたもんです。
この映像、ぼくが持ってるVHSのテープと素材は一緒だけど別の編集っぽい。どういうことになってるのかよくわからんです。


"Will to Power"