「ユリイカ」安彦良和特集、「ちくま」オタク文化の現在

ユリイカ」今月号、安彦良和特集に小文を書きました。『まつろわぬ「マンガ」 安彦良和と「不純な領域」』と題し、いしかわじゅんによる安彦<批判>への再批判的な検討を手がかりに、マンガ表現史上に安彦良和を位置づけることを試みています。




それともうひとつ、筑摩書房のPR誌「ちくま」9月号で、森川嘉一郎氏、竹熊健太郎氏と鼎談を行いました。
http://www.chikumashobo.co.jp/pr_chikuma/
※リンク先、現在は8月号の目次が掲載されています。


両氏とは同誌で「オタク文化の現在」なる連載を持ち回りで行っているんですが、その連載の中締め的なものです。今回は「オタク・サブカルサブカルチャー」と題し、「オタクとサブカル」という対立構図が、オタクの側のアイデンティティの問題として形成されていることについて語っています。次号にも続きが載ります。


この号の「ちくま」に少々レア感があるのは、ぼくらの鼎談と一緒に、唐沢俊一氏の原稿が掲載されていることですね。米澤嘉博著『戦後少女マンガ史』の書評をお書きになっています。これが意外にも率直な自分語りをされていて、思いがけず好感の持てるものになっています。文中にある、氏が「恥じた」という「自分の精神の卑小さ」について真摯に掘り下げていくと、今後のよい仕事となっていくと思いました。
ただそれは氏が「鬼畜」などという偽悪的な仮面を捨て去り、自分自身と誠実に向き合うことであり、「反省」とほぼ同義なので、たいへん困難なことです。しかし、その萌芽を、氏は(無意識的にかもしれませんが)この「ちくま」の原稿で見せてしまった。であれば、読者がその次を期待するのも仕方のないことでしょう。氏に信頼をよせ、場合によっては尊敬してきた読者ほどそうだと思います。


戦後少女マンガ史 (ちくま文庫)

戦後少女マンガ史 (ちくま文庫)