『鈴木先生』二巻の途方もない面白さ



鈴木先生 2 (アクションコミックス)

鈴木先生 2 (アクションコミックス)



面白い。ものすごく面白い。それはそれは面白いのであります。
異様に苦悩しまくる中学校教師・鈴木先生を描いた、ある種「怪作」としてすでに知られている作品です。昨年のベストにこの作品をあげた方も少なくありません。ぼくもそうしましたし、たぶん今年もそうするでしょう。なんというか……素晴らしいです。
一巻にも増して怒涛の展開に、これほど日常に密着したリアリズムを徹底しながら、「中学校」という空間をかくも奇妙なものとして描いていることに驚かされます。おそらく、ここを貫いているのは「エロス」というものでしょう。ことこの巻では、ファム・ファタル的ヒロイン女子中学生・小川蘇美の存在がさらに前面に出されており、そのことをはっきり見せています。


この子、あえていえば綾波レイが本当に現代の中学校にいたらどうなるか思考実験」みたいな一面があると思います。もちろん、絵柄や設定などキャラクターのありようとしては相当に差異があるし、作者の意図ともおそらく関係のない話なんですが、しかし、それでもやはり綾波と重ねて見てしまうのは、作中の鈴木先生が彼女を見る視線や欲望のありようと、綾波萌え男性が綾波を見るそれとがひどく近しいものに思われたからです。鈴木先生は担任のくせに、小川蘇美のことを「カミサマ」とかいっていますしね。その意味では、ひどくメタ的な視点が繰り込まれており、一筋縄ではいかない作品だと思います。まーほかのいろんな意味で、どこをどう考えても一筋縄でいかない作品ではあるんですが。


帯の推薦文は江口寿史、解説はわれらが宮本大人先生であります。


作者・武富健治氏のウェブサイト:http://www.oxna.net/