小谷野敦様よりご返答をいただきました。

20日づけの日記に書いた『帰ってきたもてない男』に対する当方の感想について、丁寧なご返答をいただきました。


帰ってきたもてない男』、理系女子
http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20050820#p1
伊藤剛氏への返事
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20050818


ようは、小谷野さん(コメント欄にいらしていただいたので、馴れ馴れしいかとも思いましたが「さん」で通させていただきます)がご自身への「求婚条件」として「一流または一・五流大学卒または大学院終了」と記されたのは、ごくごく個人的な条件、いわば「好み」や「相性」に属するものだということです。なぜ地方大学が入っていないかについても、ようは、それぞれの理由で個人的に「嫌」だから、ということでした。


あくまでも「個人的」な「好み」の範疇で「学歴」や「大学名」をあげるということは、普通まずされないことです。ですから、小谷野さんの意思表示は、逆にいえば「学歴」や「出身大学名」については、一般に個人的な「好み」として捉えられていない/捉えることができない、という事実を暴き立てているといえるでしょう。


その意味では、「学歴社会」に対するカウンターということもいえるかとは思います。同時に、小谷野さんの言説は、たいへん挑発的で、かつリスキーだと思います。そして、そのリスクから逃げないというのが、小谷野さんの姿勢だと理解しています。こと「学歴」の話題となると、誰もが自分自身の立ち位置を参照して語るを得ず、東大を出ている方は東大卒であることに、高卒の方は高卒であることに、それぞれ各々にコンプレックスを抱いてしまいがちなものだからです。とかく強い感情が引き起こされる。
2ちゃんねるの学歴板が荒れるのも道理です(私は2ちゃん自体をほとんど見ないのですが、ひとから聞いた話では、しょっちゅう荒れるんだそうです)。もちろん、セカンドベストの地方国立大を出ている私にも、そうした感情はないわけではありません。
もっとも、自分の「学歴」と関係ない仕事をしているので、意識する機会はあまり訪れませんが。


すでにプロフィルなどご覧になっておられると思いますが、当方、名古屋大学理学部を出ております。先の感想も、そうした立ち位置から出たものとお考えください。とくに私が学んだ地球科学科は理科系のなかでも"周縁的"なところで、学部のときの飲み会で「文学部へ転部を考えたことのあるひと!」といったらその場の全員(といっても5,6人ですが)が手を上げたということもありました。一学年17人というこじんまりとしたところでしたから、それなりの高率で「文系」とは親和性のあるところと存じます。また、東京工業大学にも理学部があり、地球科学科も存在します(ここの教官である丸山茂徳氏は、私の出身研究室のホープです)。
斯様な背景があり、かつまた英国で「シェイクスピアを読んでいるかどうかは教養として問われるが、熱力学の三法則を知っているかどうかは教養として問われない」と嘆いていたひとがいたように、文系・理系の「知」を「教養」という水準で見た場合、とかく文系の方は理系のそれを「教養」とみなしていないという一般的ないらだちも若干ありました。もっとも、今回、小谷野さんからご説明いただき、そうしたこととも関係がないことが分かりました。やはり当方の「誤読」だったのでしょう。