では、ニューオーダーのみなさんで、新曲「クラフティー」です。

New Order の新譜 "WAITING FOR THE SIRENS CALL" をようやく購入。


ついぞ話題の "Krafty" 日本語詞については、やはり一言なんかいいたい。
というか、シングルカットしたらジャケはこれがいいんじゃないかと思った。PVに出てきたのは、「いかにも」マンチェスターのワーキングクラスというやせっぽちの青年とその彼女。それと対置するには、このオタの自画像がぴったりだ。


という面白くもない冗談はさておき、今日、買うまえにお店で試聴しようとしてイントロで止めたんですよ。これは家でちゃんと聴こうと。しかし、家でも頭から聴きだして一周目はまたイントロで止めたりして。何そんなに意識してんだ、というところだけれど、バーニーの日本語が大爆笑だったらどうしようという気持ちがそうさせていたと思ってください。


一方にもうひとつ不安材料があった。
歌詞カードをみて、「このこなれてない変な日本語は何?」と思ったのだ。
たとえば、「先に暗号で君を成さない」。なんだ? 意味が通らないぞ。元詞ヴァージョンと聴き比べてみてようやく何だかわかった。
これ「ソラミミ」だったのだ。「先に暗号で」ってのが元詞の "With just one more day" と、「君を成さない」が "Give me another night" と対応させられている。あと「上がる熱も」って箇所も "I've got to let to know" に対応したりしている。


結構、これが謎の配慮で、確かに原曲の耳ざわりは尊重されているし、バーニーは唄いやすかったのかもしれない(あるいは彼に言語指導はしやすかったかもしれない)。だが、原詞のニュアンスや曲の主題が損なわれている。だから謎。意図が見えない。誰に向けた工夫なのか、さっぱり分らない。なんでこういうことするかなあ。


ぼくは日本語詞を担当した後藤正文が所属するアジアン・カンフー・ジェネレーションなるバンドを聴いたことがないのでよくわからないが(普段からこういう言葉遣いではなさそうだ)、結局、UKの、すでにロックの殿堂に入ったバンドの歌詞を担当するにあたって、変に縮こまった優等生の答案を書いてしまったってことではないのか。今回の日本語詞ヴァージョンはバーナード・サムナーの発案によるという。であれば、なおさら過剰な「配慮」をしてしまったことは想像できる。


いずれにせよ、この日本語詞は、ファンとしては嬉しい。バーニーがあの声で「ぼく」「きみ」と日本語で唄っているだけでじんときた。けれど、日本語詞の全体がせっかくのその企画を、「日本のファンのためのサーヴィス」という枠にきっちりと押し込め、そこから一歩も出さないようにしてしている。残念だ。元曲の詞を踏まえ、日本語の特性を活かして換骨奪胎し、バンドに対して剛速球で返球する……というワザが欲しかった。


あ。ちなみに大爆笑はしなかったすよ。バーニーはたどたどしいながらも懸命に日本語を操っており、かつまたニュー・オーダーのメロディラインが一般に日本語になじみ易いということもあって、そんなに「変」ではありませんでした。


日本語版への感想をまとめると、ぼくは日本人の「ファン」なので、じゅうぶんサービスされました、という感じ。アルバム全体はとても素晴らしいと思いました。バンドが自らのキャリアを振り返り、総決算的にリファインしたように思えた。ニュー・オーダーによる「ニュー・オーダー」ということもできるが、決してそれが自己模倣にはなっておらず、さらなる前進を感じさせた。



しかし、オリコン初登場10位っていうけど、昔からそんなに売れてたっけ?>ニューオーダー