福満しげゆきが小学館「IKKI」に



載っているとの情報をしばたさんのところ http://picnic.to/~ohp/ で知り、「なに?」とコンビニへ。「IKKI」は毎月買っているのだが、今月はまだだったのだ。

福満しげゆきのマンガ、『新世紀僕はどうなる』は「IKKI新人賞 第11回イキマン」の入選作だった。福満しげゆきはすでに「アックス」などで活躍していて、単行本もある。「アックス」誌では小特集も組まれ、ファンページもあれば、はてなキーワードにも登録されている。「永遠の青二才」系の、しょぼくれた青春モノを描かせたら、たぶん現在もっともイキのよい作家だ。ぼくにとっても、かなり好きな部類に入る。
まあ、マイナー誌で活躍してきたマンガ家が、メジャー誌へ場を移すときにあえて新人賞に応募するのはわりとある話だ。それが本人だけの意思か、「新人賞」という手順を踏みましょうという編集部との合意かは別にして、とりたてて珍しいことでもない。ただ、その場合はマイナー/メジャーという媒体の「格差」が前提となる。たとえば、80年代後半に近藤ようこが「ビッグコミック」の新人賞に応募し、その後「ビッグ」系の媒体で『遠くにありて』や『ルームメイツ』などの良作を発表していったことなどが、この例にあたる。

気になったのは審査員講評。

主人公の男の子のキョドり方、異常に色気があって掴まれます。(中略)不思議な魅力が沢山つまっていると思います。
日本橋ヨヲコ


作者のセンスを感じましたし。ほんと最初から最後まで心の底から読者(審査員であることを忘れて)になって作品を楽しむことができましたし。俺大好き!。
三代目魚武濱田成夫


普通に読んでしまいました。読み出したシュンカンにフンイキに飲まれました。(中略)まーとにかく超個人的に、僕はこの話が好きです。このキャラも大好きです。
石井克人




うーーーん。そりゃそうだよ、だって福満だもん


しかし、どうなんでしょう。審査員たちが福満しげゆきのマンガを知っていたかどうかはむしろどうでもいいのだけれど、「新人賞」にすでにキャリアのある、評価もされているマンガ家が混ざっていたとして、「講評」でそれをどう扱うかってのは難しいところだろう。「私、まえからこの人のファンで、単行本も持ってます」ってのはやっぱりまずいんだろうか。


もし自分が講評を書く立場になったら、相当に困ったと思う。他の応募作と並列に扱うべきだという考えが一方にありつつ、でもこれ単にいつもの福満だもんなあ、『モウカルハナシ』*1とか絶品だったよなあ……とか葛藤したことだろう。やっぱここは知らなかったフリしといたほうがいいの? とか。


大きくいえば、マンガがこれだけ巨大になって、隣のことが分からなくなってきているいま、「新人賞システム」がどう機能するか? という話にもつながるわけだが、「IKKI」と「アックス」じゃあすぐ隣というか、読者だってそれなりに重なっているだろうに、と思う。そのへん、なんかモヤモヤするのだ。なぜなら、かつてのように「マイナー誌/メジャー誌」の境界は明瞭ではなくなっている。「アックス」と「IKKI」の差異はコンビニに置かれているか置かれていないか、使える経費の額が大きいか小さいか程度の違いしかないのかもしれない。だが、小学館サイドにそういった構造的な変化に対する認識がどの程度あるのか。「ウチから出ているだけで”メジャー”ですから」という立場を決めこんではいないか。編集長・江上英樹氏の講評「さすが単行本まで出されたプロの方、きちんと面白かったです」からは、かすかだがそんな匂いがする。


福満しげゆきがこれから「IKKI」で描くってことなんだろうけど。作者コメント「チャンスがあれば、また載せてほしいです」をみると、「営業? これ単に営業で送ったってことですか?」という気もする。ラフトレードから出してたキャバレー・ヴォルテールがヴァージン傘下のサム・ビザーに移籍したとか、そんな感じ? 違うか。違うな。

*1:単行本「まだ旅立ってもいないのに」収録