『ふたつのスピカ』柳沼行(メディアファクトリー)

昨日、仲俣暁生id:solar)さんと会った。3月10日発売の「本とコンピュータ」、マンガ特集の打ち合わせだ。いままで接点がなかったのが不思議なのだが、これが初対面。特集では15枚ほどの論考を書きます。
その内容とは直接関係ないのだけれど、仲俣さんが日記で触れていた(http://d.hatena.ne.jp/solar/20040114#1074044357)『ふたつのスピカ』についても話す。ぼくはいい作品、いい作家だと思うけれど(正直なところ、主人公のアスミには結構萌えている)、この物語が「かくあったかもしれない未来」という追憶の夢に支えられた、閉じた円環なのではないかということに引っかかりをおぼえる。それはこの物語に描かれている「風景」の古さに決定的にあらわれているように思う。ここでの「風景」は懐かしく、80年代のそれのように見える。設定上、2010年代を舞台とするこの物語は、こうであったかもしれない1986年の物語ではないのか(86年とは、いうまでもなくチャレンジャー号の事故の年である)。ぼくはそれも含めて肯定するべきなのだろうか。臆せず「追憶の未来」を描く潔さを賞賛するべきなのだろうか?