「宝石の常識」シリーズ ルビー&サファイア(双葉社・監修:岡本憲将)

この「宝石の常識」シリーズは、なかなか面白いムックです。読むと、宝石のことを知っているようで、案外、知らないものだということに気づかされます。この本は、産地の様子などを写真入りで細かく説明しているほか、宝石のグレードについて丁寧に解説しているあたりが参考になります。
ではあるのですが、一般に、宝飾品としての宝石に強い人だと、今度は鉱物としての宝石についての記述が甘くなりがちな気がします。もっとも、「科学的な事実」とされてきたものも、知らないうちに新たな観察によって上書きされていることもままあり、とすると、より現場にいる宝石関係者のほうが真実に近い場合もあるのではないかと思えてきます。
……とまあ、くだくだしく書いていますが、以下に引用する記述、これはどんなもんなんでしょってことなんです。

「ルビーを観察すると、石の中に異物が入りこんでいることに気づくはず。これが内包物(インクルージョン)といわれるもの。美しさをじゃまするものと考えがちだが、ルビーの鮮やかな赤色は、内包物の中に酸化クロムと呼ばれるものが入り込むことによって生まれる。また、内包物があることにより、人工のものには感じない暖かみも加わる」

ルビーのクロム着色は、すべて固溶体によるものだと思っていましたが、そうではなく、インクルージョンによる、たとえば三宅島の灰長石のような赤もあるということでしょうか。