田中ユタカ『愛人』新装版

版元の白泉社さまよりご恵投いただきました。
約10年まえ、連載中にbk1でインタビューをさせていただいたご縁です。
実は書店で見かけて買って帰ってきたら届いていたのですが、一組は学校に寄贈することにします。


愛人 上―特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)

愛人 上―特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)

愛人-AI・REN- 下 特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)

愛人-AI・REN- 下 特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)



アマゾンに書影がまだ入ってない様子ですが、この新版はジャケにキャラ絵を使っていません。
漫棚通信さんのところでもコメントをしたんですが、空の写真を使ったデザインには、ケータイ小説を思わせるところがあります。


旧版のジャケは、幼い少女ヒロインを大きくフィーチャーした、キャラ絵主体のものでした。
田中ユタカといえば、若い男女の愛情と一体になったセックスを描く、「ラブラブなエッチマンガ」の第一人者ですが、その固定客を意識したデザインでしょう。けれど、書店で手に取るのに抵抗を覚えるひともいたことは想像に難くなく(とくに女性には)、ちょっと勿体ないと当時から思っていました(キャラ絵の使い方だけでなく、フォントの選択や配色もいいとは思えなかった)。
もっと別のところにもこの作品の読者はいると考えていたからです。


とはいっても、この『愛人』(あいれん、と読む。中国語で配偶者、恋人のこと)が、それまでの作者のキャリアと切り離されたものかといえば、そうではないでしょう。ある意味「セカイ系」の極とも言えるこのSF作品には、「ラブラブなエッチマンガ」で描かれてきたテーマを極限まで掘り下げた感のあります。少々観念的な生硬さもなくはないんですが、作者がある種「捨て身」で描いた作品だと思っています。


それゆえ、つい構えてしまい、なかなか言及することができずにきています。
旧版刊行時に新刊レビューという形で書いたのが多少まとまった文章でしょうか(拙著『マンガを読む。 The Manga Reviews』所収)。


いい作品だと思います。ぜひ。