最近のマンガ

すっかり新刊について書くことをさぼっていました。
ここ一月ほど読んで気になった新刊を順不同で列挙します。コメントはメモ的なものです。


鈴木先生(3) (アクションコミックス)

鈴木先生(3) (アクションコミックス)

あいかわらずの濃さ、面白さ。正面から論じようとすると泥沼にはまる感触。二巻のセリフをもじっていえば「返しにくい球だ!」


サムライうさぎ 1 (ジャンプコミックス)

サムライうさぎ 1 (ジャンプコミックス)

漫棚通信さんの評http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_5066.html(コメント欄含む)と、SPA!の吉田大助君の評をあわせて読んで急速に興味を持ちました。漫棚通信さんは時代劇のコードをあまりに無視した「江戸」の描写や設定にどうしても乗れないという感想を持ち、吉田君は全体が主人公のモノローグ(語り)で牽引されている形式の新しさに注目しています。このギャップが面白いと思いました。ラノベ的な形式がもたらす想像力がマンガにどう入ってきているかという興味と接続されたんですね。


田中ユタカ待望の新作。「あの世感」が強く漂う作品。これほどまでにお話の抽象度を上げる力技に驚きました。またこの作品の「ちから」を目にして、やはりぼくは宇野常寛氏の「決断主義」を批判しなければならないと思いましたね。それこそ、そう「決断」したわけですよ(笑)。


トロイメライ

トロイメライ

これまた待望中の待望であった、島田虎之介の新作。今回の狂言まわしはピアノ。小さなエピソードの断片をちりばめ、20世紀の世界を貫く大きなホラ話にまとめあげる手腕は健在です。近代的な「大きな物語」が「小さな物語」群に解体したのちの世界で、それら小さな物語群を神話的に語りなおすということでしょうか。ここでは、大きくも小さくもない物語が語られているという感触があります。
いわゆる「セカイ系」の後に来るものを考えるのであれば、こうした想像力のあり方、世界との接続の仕方も射程に入れる必要があるのではないかと思いました。