新しい創傷治療 「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して

http://www.wound-treatment.jp/


最近このサイトをみつけて、感銘を受けた。
詳しくはリンク先を見て欲しいのだが、とても論理的に傷の消毒には治療効果がないことを説いている。やや過剰な語り口に、はじめは胡散臭く思われるかもしれないが、ここの議論と実践をみると「傷の消毒」という、一見「科学的に」見えていたことが実は「印象」による没論理に基づく行為であり、真に論理的・科学的な思考を覆い隠していることがわかる。こういったことは、他の分野でもままあるんじゃないだろうか。


「新しい創傷治療」を説くサイトオーナーの医師は、傷の治療に際し、浸出液を取り去ったり、傷を乾燥させることを強く批判し、傷を乾燥させず密閉する「うるおい療法」を実践している。もちろん、その過程で傷の消毒は行わない(ただし、傷口の洗浄は徹底的に行う)。浸出液に、傷口の修復を促す物質が含まれていることと、傷口に盛り上がってくる肉芽細胞の増殖や生長には水分が必要であることがその理由だ。さらに「消毒」は確かに細菌を殺すが、その効果は一時的なもので、すぐに他の部位から皮膚常在菌がやってきて、傷を無菌に保つことはできない。加えて「消毒」はせっかく増えてきた肉芽細胞をも細菌ごと殺してしまう。つまり、傷の回復を遅らせるだけだとしている。


このあたり、実に平易な言葉で、丁寧に(くどいほど)解説がされているが、論理的な破綻はない。また、具体的な批判により、これまでどこの病院でも行われてきた「消毒」行為が、いかに儀式的・秘教的なものかもよくわかる。


一方、このサイトには、その治療過程の画像が多数載せられているが(ショッキングな画像もあるので苦手な方は注意)、それを見ると「ホントにこれで大丈夫なの〜?」と心配になる。うす黄色く浸出液がじくじく染み出している画像などを見て、やっぱり消毒しないと化膿しちゃうでしょ、と思った。はじめこの医師の主張を胡散臭く感じたのも、そのせいだ。
しかし落ち着いて考えてみて、ここで「消毒」が必要と考えてしまったのは「腐敗」のイメージを重ねているせいだと気がついた。生体に生じ、生体自らが修復しようとする過程にある「傷口」に、生命を持たないもののうえで菌が増殖していく「腐敗」の印象を無意識に重ねていたのだ。


これは、ぼく一人の話ではなく、案外、古来から「化膿」と「腐敗」は印象のうえで区別されてこなかったのかもしれない。「化膿」と「腐敗」では、その現象が起こっている場所が生命を帯びているかどうか、血流や免疫などの活動があるかどうかという決定的な違いがある。だがそのことは「見た目」の印象で覆い隠されてきたのではないかと思った。


※いま更新してみたら、すでに「うるおい療法」「湿潤療法」がはてなキーワード化されていました。
 ぼくがアンテナ低かっただけで、もうかなり知られた療法なのかもしれないですね。