どうしちゃったの? 江川達也

昨日、「スピリッツ」をみたんだけど、江川達也日露戦争物語』、たいへんなことになっていませんか。キャラのクロース・アップとセリフ、解説ばかり。普通に考えて「手抜き?」感が強く漂っています。作品としてのテンションも感じられず、どこか空転している印象がありました。


お仕事でやってる「学習まんが」であればまだこれでいいのかもしれませんが、週刊マンガ誌に載ってるのはどうか? と思います。すでに「学習まんが」としての機能しか読者が必要としていない、という判断なのでしょうか? そうだとしたら、ずいぶん読者をナメた態度だと思います。
ここで「学習まんが」といってるのは、読者が物語内容ではなく、そこに盛り込まれている「情報」を得ることに価値を見出すものというほどの意味です。だから、当然「学習まんが」にもいいものはたくさんある。「情報」の提供を第一義におきつつ、それ自体として再読、三読させるような味わいのあるものですね。秋玲二内山安二、最近だとあさりよしとおといった作家は、そうしたよい仕事をしています。


しかし、ここのところの『日露戦争物語』はどうなんでしょうか。
かつて江川達也は、入念なデータ収集とマーケティング的な分析をもとに『まじかる☆タルるートくん』をヒットさせたと自ら語っていました。『タルるート君』についての評価はここでは保留しますが(でも、現在でもこの作品に思いいれている人ってどのくらいいるんでしょうか? 『ドラえもん』へのカウンターとしてはじめられた同作ですが、ぼくにはもう跡形もなく風化しているように見えます)、自らがそうした分析的な姿勢であることを、ほかならぬ江川達也自身に言い聞かせ続けたことが、マンガにとって最も大切なことから目を逸らす結果になったのではないかと思います。とても、残念なことです。「最も大切なこと」とは、マンガというのは、程度の差や質的な違いこそあれ、「感情」を売る商品だということです。


いつのまにか、「読者」が個々に人格を持ち、生活を持ち、感情を持った存在だということを忘れてしまったのではないかとも思います。
とても残念な話です。