ぶたやのヒマラヤ水晶

今日は今年度最後の授業。課題の評価などをする。溜めた自分が悪いのだけど、人数がまとまると結構たいへん。


店名をみて前々から気になっていた恵比寿の「ぶたや」で昼食。豚肉料理店……ということのようだが、コジャレてみせたものの、いまいち気持ちよくない内装、要領を得ない接客、おトク感のない少なめランチ……と、残念ながらぼくには必要のないお店だった。夜、飲みに来たらまた別の感想かもしれないけれど。
食うものを食って出ようとしたら、いろいろ置かれた雑多なオーナメントのひとつに、ヒマラヤの水晶があった。それも単晶ではなくトッコ。10cmを超える、大ぶりの両端つき水晶が中央に横たわり、脇に指くらいの水晶が何本も生えている。なかなか良品に見えた。ほかのお客が食事をしている後ろだったのでよく確認していないが、母岩が白っぽい糖粒状石英タイプのようだった。

ヒマラヤの水晶についてはぼくもあまり詳しく知らないのだが、少なくとも3〜4種類のツラ違いが出回っている。だいたい「ガネーシュ・ヒマール」産とされているのだが、はっきりとした情報には乏しい。また「ガネーシュ・ヒマール」といっても相当に広い地域を指すのだろうし、何カ所も産地があるようだ。現物を見たことのある範囲では、緑泥片岩の空隙にいきなり晶出し、曹長石、くさび石を伴うタイプのものが、透明度、テリ、姿ともにいちばん良いように思える。このタイプのものは、山梨県小尾八幡山の水晶と感じがよく似ている。端面に向かうにつれ、径が細くなる柱面の形態とか、高い透明度の一方で、わずかに黄色みがかってみえるところとか、いくぶん「とろりとした」テリだとか。産状がまったく異なるのに(小尾八幡山のものは花崗岩由来)、このような相似がみられるのは興味深い。


参考:ヒマラヤの石について
http://www.circulation.co.jp/bhs/about_himalayan.html
パワークリスタルのショップの解説文。パワー方面の分類や理屈はともかくとして(まあ、他人様のご趣味ですから、とやかくいわずにおきましょう)、石のツラや産出状態について詳しく解説されている。鉱物趣味サイドからみると観察や記述が甘い……とも思えるのだが、そこは補足しながら読むことにしよう。少なくとも、解説の筆者がきちんと石をみていることは伝わり、好感が持てる。
してみると、「科学的な記載」に用いられるクリシェってのは、対象について細かく効率的に記述するという意味において(つまりツールとして使えるという意味で)、やはり大したものなのだな、とあらためて思いました。

><